ペンギンの水中での能力を発揮できるように、水中空間に障害物があったり、深さに変化があったり、動きが単調にならないようになっています。寒冷地、温暖地のペンギンを飼育していますが、室内を冷暖房し、屋外とは強制的に遮断せずペンギンの意思で室内、屋外の環境を選べるようにしています。来園者にペンギンの本来の生活の場である水中に入り込んで見てもらえるように足もとから天井まで360度透明なアクリルのトンネルから自由自在に泳ぎ回るペンギンを観察できるようにしました。現在までに考察・建築した獣舎は、それぞれの動物の能力・習性を発揮させ、動物たちが生き生きと過ごせるように考えました。見る側にとっても生き生きとした動物を見るのは気持ちがいいはずです。当園の場合、生き生きとさせる工夫の中にエンリッチメントは含まれていることと考えます。さらに動物園は「見てもらうための施設」ですから、来園者を動物のストレスの対象とは考えず、いかに単調になりがちな飼育動物の「気晴らし」の対象になるかを考えました。来園者は見ているつもりでも実は動物の側が見ている目線関係になるかを考え、見る側にとっても「回り込んで見てみたい」を満足させられるように工夫しました。いずれも動物を無理に見せ場にいるように仕向けるのではなく、動物が自然とこちらが意図した行動をするようにしてあります。また、すべての建物で既成の看板は最小限にとどめ、大半の情報は「手書き看板」で行なえるようにしてあります。
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