夜行性動物館内のアフリカヤマネ舎

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「いないよー。」「いた!なんだ、ゴキブリか」こんな声ばかりが聞こえてくるアフリカヤマネ舎でした。小さな体、動き方などから、ほとんどお客さんの興味を引く種ではありませんでした。それにしても、哺乳類と昆虫と間違えるなんて! この時点でアフリカヤマネ舎内展示利用は床面に限られ繁殖を重ねても最大飼育頭数は、噛み合い、子殺しなどの原因で30頭止まりでした。畳一枚足らずの小さな部屋であっても動物園の中では1・2を争うほどの小さな体では巣箱に潜んでしまえば見えないのも無理はなく、「野生からの動物大使」と言われる言葉が空しく響くだけでした。とにかくお客さんの目にとまることから始めなければと頭数を増やすことを考えた時、それ以前になぜこの舎内では30頭止まりなのか? 単純に「1頭あたりの単位面積の狭小さ」が挙げられ、これがさまざまな障害になっているのであろうと思い及んだ時、繁殖のための巣箱を増設してみようと試みました。平面ではなく立体的に重ねることにして、今では50巣を数える程になり、頭数に応じ順次増設4段5段となり皆さんから「ヤマネマンション」と呼ばれる程になっています。巣箱を増やす一方で巣財も従来、餌の食べ残しであるヒマワリの種の殻、杉皮程度しかなかったものから少しでも巣内での居心地改善をと、苔、カシの葉、枝などを与えた所、思惑通り充分活用していてくれるのは嬉しい限りです。このような中で一産出産頭数も1・2頭止まりであったものが3・4頭と増えてゆき現在総頭数は100頭を越えています。 動物園はお客さんが「見て、考え、学ぶ」施設であるはずです。そのためにも先ず「見ていただく」ためには「見せる工夫」が重要だと考えています。従来の床面一面利用の飼育から広がりのある立体的な空間の有効利用とあいまって飼育頭数は増大し、マンションどうしを繋いだ木の枝等を行き来する姿を見ていただけるようになりました。姿を見つけることが出来ず素通りされることは無くなり本来あるべき「見ていただける施設」になっていきました。現在は葉付のカシの枝を立てて入れてあるのですが、時に枝にアフリカヤマネが鈴なりとなり、今までの工夫が実を結んでいるような気がします。 このように紹介していきますとただ頭数を増やしただけのように思われがちですが冒頭に書きましたように30頭しか飼育できなかった場所でこれだけの頭数になったのは繁殖できなかった障害を取り払い「ストレスからの解放」ができたからにほかならないのではないかと思います。 頭数が増え、お客さんの目に触れるようになると、以前は見ていただくのに大きなネックになっていた体格の小ささが「小さくて、かわいいね」など、その小ささゆえのパフォーマンスで彼等の魅力を存分に発揮して、7種展示している夜行性動物館のなかで見向きもされなかったヤマネが今は一番人気を博しています。 「あっ!いた、いた!」「あの子、さっきと違ってこっちの子と仲良くしているよ」「あの子逆さになって食べているよ。器用だね!」などの声を頻繁にお客さんから聞くことができるようになりました。1頭2頭しか見ていただけなかった時と基本的に異なり多頭飼育の狙いのひとつとして、個を見て頂くばかりではなく「個と個のかかわり」を観察していただけているようです。「理解」は知ってもらう所が出発点ではないかと思っています。「知る」にはまず「見る」ことから始まるのではないでしょうか。その意味からも動物からの視覚的メッセージを伝える施設としてはかなり満足のできるものになってきました。 私達飼育係のお客さんへの直接的な働きかけとして、見ていただいた時、観察、理解の一助になればと、説明板を取り付けようとしたものの真っ暗な通路でどのように読んでいただこうかと思案の末「説明ボックス」なるものを製作し、中を照明して覗き込んで見ていただくことで通路に明かりがもれるのを防ぎながら、暗いという条件の不便も解消し、お客さんの遊び心をくすぐり親子で交互に覗き込みながら会話が弾み、積極的に読んでいただけるようになりました。内容は行動、かかわり等についての紹介で、イラストを多く入れ、文字も親しみやすいようになるべく手書きを心がけ、適宜差し替えることでリピーターの興味にも答えながらリアルタイムな情報をお伝えすることができるよう心がけています。 将来は舎内施設の改良増設、血統管理を確実に行ってゆき、更なる繁殖頭数の増大を図り、聴覚面においてもマイクなどを使用し舎内で交わされているアフリカヤマネのささやきをお客さんにこっそり聞いていただこうかとも考えています。