日本の動物の展示として、タヌキ、キツネ、ハクビシンなどが、同じような環境で並べて飼育されている。動物との間を空堀で隔てられているこの飼育は、来園者からの動物の位置も遠く、動物自体も片隅にうずくまっているだけで、来園者にはおもしろくないし、動物にとってもとても「いい環境」とはいえない。
しかし、アナグマの飼育場所には、アクリルとメッシュで来園者のほうに通路が突き抜けており、元からあった植栽の空間を利用して砂が盛られ、そこでアナグマの穴掘り行動を観察できるようになっていた。実際、アナグマはその「穴掘り空間」を展示場の間を往復していた。通路は、来園者の足元を通っているのだけれど、来園者がそこで待っているかいないかは関係がないようで、来園者がいても、突っ走っていく場合もあれば、途中で引き返すこともあった。いったん穴掘り空間へ行くと、砂に顔をうずめて穴を掘る行動に熱中していた。穴掘りの行動は、すぐ目の前で薄いアクリル1枚越しに観察できるので、手足の動きや顔をまじまじ観察できておもしろい。前足が土を掘り出すためにすごく強力そうな構造をしていて、顔が穴に入っていくために便利そうな構造をしているのが実感できる。アナグマは2個体おり、どちらのアナグマも探索行動をおこない、穴掘り空間にやってきては、相手のことなどお構いなく穴を掘る行動をしていた。アナグマにとっても、野生本来の行動を発揮できる穴掘り空間が「いい環境」であることが良くわかる。
解説版には、「砂を片付けてくれないので、管理は大変」といった内容が書かれていたが、そうした仕事以上の魅力ある展示なので、これからもぜひ続けて欲しい(可能なら、他の樹木の下にも拡張するなどパワーアップしていって欲しい)と思う。アナグマは、本来複数の集団で生活し、地下都市のような複雑な構造の穴の中で暮らし、その穴で利用している乾草などの巣材を日光に当てて”干し”たりするそうなので、そういた行動も今後展示できればおもしろいのではないかと思う。