受賞の声


 この度は、奨励賞をいただきまして、誠にありがとうございます。
 当園のゾウ“ふくちゃん”は、ボルネオ島で孤児となったボルネオゾウで、導入当初は複数頭飼育の予定で施設整備もされていましたが、手違いで、やむなくふくちゃん1頭のみの飼育となりました。そのため、ゾウの社会性を養う機会が少なくなってしまいましたが、ふくちゃんに少しでも幸せに暮らしてほしいと思い、福祉レベル向上を目的として、まず現状の行動調査を行ないました。常同行動が多く観察されたため、SPIDERモデルに沿って、年次的に複数のエンリッチメントの効果を行動学的に評価し、常同行動減少につなげてきました。これらの研究は、科学研究費補助金や大学をはじめとした研究機関など、多くの方々に協力していただきながら進める事ができました。本当にありがとうございました。
 そんな中、『結核』を発症してしまい、“死”という言葉がよぎるほど痩せて弱ってしまいました。日本では初めて生存するゾウで確認されたため、海外の文献等を参考にしながら、獣医師や担当職員をはじめとして、園全体が一丸となって現在も治療にあたっています。継続的な投薬やケアにより、現在の見た目は以前の状態に戻り、常同行動もかなり減少しました。 
 一方で、ふくちゃんの状態を多くの方々に知っていただきたかったので、ブログやFacebook、twitterなどで闘病中のふくちゃんのことをお知らせいたしました。そして、多くのふくちゃんファンからお便りや好物の差し入れなどをいただくようになり、ファンの方々の協力によってふくちゃん募金が開始され、支援の輪が広がりました。この場を借りて、ファンの方々の集まりである『チームふくちゃん』や、枝廣市長をはじめとした『ふくちゃん応援隊』など、支援していただいた多くの方々に感謝いたします。本当にありがとうございました。
 また、これまでに当園そしてふくちゃんは、エサやり体験の参加費などをボルネオ島の野生動物保護のために募金としてボルネオ保全トラストジャパンへ寄付し、ふくちゃんの故郷を守る活動もしてきました。この受賞を機に、私たちが日々使用しているパーム油とボルネオゾウとの関係についても、多くの方々に知っていただけたら幸いです。
 最後に、ふくちゃんの治療は現在も毎日続けており、ふくちゃんもよく頑張ってくれています。治療完了を目指して頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

福山市立動物園
萩原慎太郎

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