Schoenbrunn Tiergarten
シェーンブルン動物園


報告者は 落合知美
訪問日は、2007年8月8日(水)、9日(木)です。
それぞれの写真をクリックすれば大きい写真を見ることができます。

 オーストリアのウィーンにあるシェーンブルン宮殿といえば、「由緒ある王家ハプスブルク」に「女帝マリア・テレジア」、「モーツアルトの音楽」で毎晩ワルツ♪なんてかんじの、ピンクでキラキラのイメージですが、その敷地内に動物園があります。2007年8月5日〜10日、この動物園がホストとなって「第8回国際エンリッチメント会議」が開催され、私も訪問したのでご紹介します。

 シェーンブルン宮殿は、王宮の避暑地として作られたそうで、ウィーンの中心より西に5kmほど離れたところにあります。ウィーン中央駅からは、4号線に乗ってシェーンブルン駅かヘインツ(Heizi)駅で降りると、宮殿の北端に出ます。敷地内に入るとすぐ、”マリアテレジアイエロー”と呼ばれる優しい黄色の宮殿があります。宮殿から南を見ると、遠くの小高い山の上にグロリエッテという建物が見えます。動物園は、その右手、宮殿敷地の西端にあります。動物園への入園はもちろん有料なのですが、私は会議の名札を見せ、フリーパスで見学してきました。

写真左:南から見たシェーンブルン宮殿。写真左手に動物園の入口があります。
写真右:広大な敷地内を走る観光バス「パノラマ・バーン」。


ロココ風パビリオン Kaiser-Pavillion

 何といっても動物園の売りは、「現存する世界最古の動物園!」ということです。動物園の歴史を調べると紀元前までさかのぼれてしまうのですが、今も残っているとなると、この動物園が世界一古いそうです。「マリア・テレジアの旦那様、フランツ1世が、1752年にはじめてお客を迎え入れた」という歴史が残っているので、1752年開園となっているそうです。その時代の様子を今でもうかがえるのが、このパビリオンです。

 この動物園ができた当時は、中心の芝生から放射状に動物の運動場を作り、中心にいればぐるりと動物を見物できる、という配置がはやっていたそうです。この施設もこうした設計で作られ、かつ、その中央の芝生にこのパビリオンを作ったそうです。そのため、この位置からは一周ぐるりとさまざまな動物を見ることができます。マリア・テレジアは、夏の間は毎朝、宮殿から子供たちを連れてここを訪れ(もちろん、その中にはマリー・アントワネットもいたそうです!)、動物を眺めながら朝食をとっていたとか。なんて優雅な生活なんでしょう!

写真左:今も同じ場所にあるパビリオン。現在は、動物園のカフェとして使われています。
写真右:動物園に掲示されていた鳥瞰図。放射状の配置の中央にパビリオンがあります。


 昔は、パビリオンのある位置から放射線状に16に分け、3つは通路、残りの13は飼育場でそれぞれ違う動物が飼育されていたそうです。マリア・テレジアが子供たちのために作ったものなので、猛獣(大型ネコ科のコレクション)が少なかったとか。現在はというと、さすがにそのまま使うのは狭すぎるので、飼育場をくっつけたり建物を建てかえたりしてありました。

写真左:ニャラと呼ばれるアフリカ怜羊の運動場をパビリオン側から見た写真。かなり古くからあると思われる手前の格子扉は開かれ、アクリルがはめ込まれていました。運動場は、水場を作ったり、土を盛ったり、倒木を配置するなどの工夫がされていました。

 ジャイアントパンダやカバ、シマウマ、フラミンゴもいました。キリンの家族もいたのですが、アフリカハゲコウとジサイチョウ、それにヒツジと同居していました。これは初めて見た組み合わせだったのでびっくりです!でも、ヒツジがなんだかこの組み合わせに似合わないような気がしました。

写真右:人だかりができているなと思ったら、オランウータンが天井から麻袋を垂らし、お客さんを”釣って”いました。


チロルの農家 Tirolergarten

  この建物は動物園の南端の小高い森の中にあります。この場所へ行くには、明るい園内から木漏れ日の優しい森の中に入り、やや急な角度の舗装されていない斜面をずんずんと登って行く必要があります。坂道の途中には、オオカミやフクロウなどの飼育場が、ぽつんぽつんとあります。森の役割などを説明したパネルも、点々とあります。野生のリスにも出会いました(写真右)。シェーンブルン宮殿ということを忘れてしまいそうです

 この建物は、1722年に建てられたチロル地方の農家を移築したものだそうです。絶滅が危惧される家畜の保護もしています。建物の中は、昔の様子を再現していて、昔の農家で使われていた道具を展示し、さまざまな種類のウシやヒツジ、ニワトリなどが飼育されていました。


感想

 昔の建物を改修して使っている(右写真)ところも多く、確かに古さを感じるのですが、動物に合わせて様々な工夫をしてあるので、全体的に努力と活気が感じられる動物園でした。1990年頃には、経営危機に陥ったそうで、1992年に民営化し、アルペン動物園からペッヒラーナ(Helmut Pechlaner)園長を招いて構造改革をしたそうです。従業員は2倍以上に増やし、教育部門の強化を図って、動物園の活気を取り戻したそうです。園長は、2007年に退職したそうですが、学会でもらった動物園ガイドの表紙にはどれも顔写真が入っていて、名物園長だったようです。

 この動物園では、世界で初めてゾウの繁殖に成功(1906年7月)するなど、輝かしい繁殖の成績も残しているそうです。訪問時も、4歳になるアフリカゾウの子供がいました。ちょうど学会期間中にパンダの妊娠が判明して、その後、日本で出産のニュースを聞きました。ホッキョクグマも、コンクリートの古い施設にも関わらず常同行動もおこなわず、毛並みもきれいでした。きっと、動物への細かい配慮ができているんだと思いました。

 シェーンブルン宮殿の一部は、アパートとして使われているそうで、「シェーンブルン宮殿に住んで毎日動物園に通いたい!」と思いました。

写真左:ロープのハンモックでくつろぐメガネグマ。
写真右:沼地でくつろぐインドサイ。おでこに土を乗せてまどろんでいます。


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