Bristol Zoo Gardens
ブリストル動物園


報告者は 落合知美
訪問日は、2009年6月6日(土)です。
それぞれの写真をクリックすれば大きい写真を見ることができます。

 今回のイギリスの旅は、会議に出る以外に目的がありました。それは、個人的に調査して作った「現存する世界の古い動物園ベスト10」の制覇です♪4番目に古いダブリン動物園、5番目に古いブリストル動物園を訪問すれば、ベスト10訪問達成!となるのです。そこで、国際会議終了後、まずはブリストル動物園を訪問しました。

 前日まで国際会議で、昨夜はデボン・ビーフを食べ、ディスコを満喫してしまったので、朝は眠い目をこすりながらのスタートです。トーキーを7時6分発の電車に乗って、ブリストル・テンプル・ミーズ(Bristol Temple Meads)駅に9時前に到着しました。宿泊予定のホテルに荷物を置き、駅前発のバスに乗ってブリストル動物園に向かいました。

 この日は残念ながら雨で、6月なのにすごく寒い日でした。トーキーでは半袖で過ごしていたので、ありったけの重ね着をして動物園に向かいます。バスで40分ほどで動物園に到着です(写真右)。以前の赤見さんの報告と異なり、来園者の姿は見えません!10%の寄付金が含まれた入園料12.50ポンド(約2200円)を支払い入園しました。園内は緑が多く、楽しそうな看板もあり、気分は盛り上がります(写真左)。


ズーリンピック、そしてズーロピア?!

 この動物園は、1835年に組織され、1836年に開園した、世界で5番目に古い動物園です。ホームページには、「世界で一番古い首都以外の動物園」と書いてありました(なるほど^^)。敷地面積5haの小さな動物園で、ゾウもキリンもいません。しかし、教育プログラムなどが充実していて、日本からも研修生や実習生などを受け入れるなど人気のある動物です。

 園内の様々な場所に、「ズーリンピック」の看板がありました。これは、「動物と対決してみよう!」という内容で、動物の詳しい説明と、時間を計ったりするボタンがついています。「片足で何分立つことができるか?(フラミンゴと対決!)」、「何分息をとめられるか?(アシカと対決!」、「どれだけ速く走れるか?(チーターと対決!)」、「15秒で何回羽ばたけるか(ハチドリと対決!)」(写真左)など、なかなか勝つのは難しそうです(いや、絶対無理です!)。でも、「動物ってすごい!」と楽しく実感できる看板です。

 今年5月に新しく整備された「探検家の入り江(Explorers' Creek)」も楽しそうです。入口の「スプラッシュ」というエリアでは、小川の水が流れ、水車が回っていて、子供が喜びそうなゾーンです(写真右)。その奥は「鳥たちの森」という建物で、湿度の高い熱帯林の中を歩くと、足元をオウギバトが横切ります。楽しげな雰囲気を満喫後、レストランに向かうと、テント下で人形劇がおこなわれていました。子供たちであふれかえり、これまた楽しそうです(写真左)。

 暖かいスープとサンドイッチで昼食を取り、ゴリラの給餌を見て、再び園内を散策です。すると、小さな部屋で何かがおこなわれていました(写真左)。面白そうなので、イスに座って参加してみます。飼育員が、机の上に置かれた箱から、いろいろな動物を取り出します。イグアナやヘビ、マイマイなどが出てきます。気味悪そうな動物も、目の前にグイッと差し出されます(写真右)。皆、その体をちょっと触たりして、感触を確かめます。

 9月には、「ズーロピア(ZooRopia)」がオープン予定だそうです(写真右)。やや高い位置にロープが張られ、丸太がぶら下がっています。この不安定で危険なコースを、落ちても安全なようにハーネスをつけ、歩くというアスレチックです。高い場所は地上から5mあり、5歳以上なら誰でも参加できるそうです。大人は6.5ポンド(約1200円)と少々高いですが、上空からゴリラやテナガザルの放飼場も見えるそうです。まだ、工事中というのが残念でした!!


動物が選べる環境作り

 この動物園は、動物への配慮も徹底しています。古い建物も、飼育動物の種類やその数を制限してうまく改修され、動物たちに圧迫感がありません。様々なエンリッチメントもおこなわれており、動物たちを「押しこめている」感がなく、安心し、楽しんで動物を観察することができます。

 「ゾナ・ブラジル」は、建物と緑と小道をうまく配置し、ブラジルの熱帯林を模した展示です。鮮やかな鳥類やタマリンなどが、止まり木がたくさん配置された運動場で、活き活きと動き回っています。屋外にはバクがいました(写真左)。ウッドチップを敷き詰め、倒木を配置し、草ネットを吊るすなど、エンリッチメントに感心して資料写真を撮ります。・・・と、ムム?バクの間にカピバラがいるではないですか!(写真右)雨をよけてくつろいでいる様子がユニークです。

 この動物園の飼育技術は筋金入りで、1934年にはヨーロッパで初めてチンパンジーの繁殖に成功したそうです。そんな輝かしい歴史を持ちながら、現在はチンパンジーを飼育せず、ゴリラの飼育に力を入れているところもすごいと思いました。

 ゴリラは、26歳のシルバーバック「ジョック」を中心に、32歳の「サロメ」とまだ甘えん坊の2歳の息子「コマレ」、29歳の「ロミナ」と元気盛り4歳の息子「ナモキ」、そして海外からやってきた「ケラ」がいました(写真左)。来園者の観察が趣味(?)なジョック(写真右)を中心に、群れが出来上がっているようです。子供たちが遊びまわる様子は、長時間見ていても飽きません。

 どの動物も、室外と室内を自由に行き来できるようになっていました。そのため、今日のような雨の日でも、外で雨宿りしたり、部屋に入ってくつろいだりと、動物たちは自由に場所を選び、くつろいでいます。室内入口の前で、「早く入れて〜」とウロウロしている動物なんていません。

写真左:室内から雨の様子をうかがうシシオザル。動物自身がどこで過ごすかを決定できるという選択肢の提供も、エンリッチメントの基本です!

 プレーリードッグは、穴を掘ったり、毛づくろいしたり、高い場所で見張りをしたりして、大忙しのようでした(写真右)。アシカたちはカラフルな遊具を引っ張りあって遊んでいるし、ゆっくりみていても飽きません。また、群れ飼育や混合飼育も多いと思いました。クロホエザルとアグーチ、アカエリマキキツネザルとオオミミアシナガマウスなど、見たことのない組み合わせもいろいろ見ることができました。


感想

 今回のブリストル動物園の訪問は、「世界で5番目に古い動物園」ということでの訪問でした。しかし、園内は活気があり、様々な新しい試みがおこなわれていました。古い建物はありますが、「古さ」の限界を感じない工夫が施され、とても楽しい動物園でした。

 来園者が楽しめる工夫はもちろん、動物も楽しめる工夫が満載で、素直に「良い動物園」と言える動物園でした。また、来園者への「ズーロピア」、動物の新しい組み合わせでの混合飼育など、常に新しいチャレンジをおこなっているのも感心しました。そのチャレンジは、「どこかの動物園のマネ」ではなく、動物園自体の知識や実力、パワーがあってこそのようです。身の丈に合った規模と内容で、技術や知識はしっかりあるところが「すごい!」と感じた動物園でした。雨で寒い日でしたが、楽しい気分になる動物園でした。身近にこんな動物園が欲しい!と思いました。


公式ホームページはこちら http://www.bristolzoo.org.uk
基本情報は、こちらをチェック。

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