ジャージー動物園
Derrell Wildlife Conservation Trust


報告者は 赤見理恵&赤見朋晃

訪れた日は2004年5月29日です。


ジャージー動物園は、あのジャージー牛の産地、イギリスチャネル諸島のジャージー島にあります。むしろフランスに近いこの島は、イギリスとフランスの両国からバカンスを楽しむ人々が集まるちょっとした観光地です。
とは言っても、ジャージー動物園があるのは島の裏側で、家々の石垣の間を縫うように走る細い道をずっと進んだ奥の方にあります。
■トラストの運営する動物園
ここは正式名称が「Derrell Wildlife Conservation Trust」と言って、かのジェラル・ド・ダレルが創設したトラストが運営する動物園です。キツネザルなどマダガスカルの動物を中心に、現地政府や他団体と協力しながら野生復帰事業に取り組んでいることで有名です。
シンボルになっているのは、人間によって絶滅に追いやられた鳥、ドードー。同じ運命をたどる動物が出ないようにという願いが込められています。

■メンバーシップになったぞ!
入園してまず目に留まったのが、メンバーシップのパンフレットです。何種類かパンフレットが置いてあり、よく読むと、小さな子ども用、大きな子ども用、ジャージー居住者用、海外居住者用の4つがあります。メンバーシップに入ると、いつでも入園できるほか、ショップが10%OFFで利用できたり、年に3回のニューズレター(海外居住者用は世界どこでも送ってくれる!)が届くとのこと。どうせ入園料が£9かかるんだから、、、ということで、2人で£29のメンバーシップに入ることにしました。(たーくさん買ったお土産が10%OFFになったので、後で計算したら十分元は取ってました♪)
実はメンバーシップだけでなく、様々な形でトラストの活動を応援している人や企業がいることを、園内のいたる場所で実感できます。ほとんどの展示施設には協賛して寄付をした団体の名称が掲示されていますし、UFAWのアワードの紹介もありました。新しくできた水鳥の観察小屋に続くボードウォークの板には、それぞれに名前が掲示されており、「もしこの活動に協賛してくれるならZooShopに申し出てね」と書いてあります。後で聞いてみたら£200の寄付で名前を載せてもらえるそう。1万円くらいなら寄付しようかなーと思いましたが、ちょっと£200は高いよ〜。それでも既にかなりのプレートが掲示してあったんですから、すごいよなぁ。


■広い!高い!オランウータンの施設
この動物園の中で一番広い面積を占めるのが、オランウータンとテナガザルの施設です。彼らはなんと同居していました。大きなオスのスマトラオランウータンのまわりを、平気でちょこちょこ動き回るテナガザル。確かに生息地は重なっていますから、こういう出会いも普通にあるんでしょうね。

そして島状の2つの屋外放飼場は、とっても広く緑に覆われています。丸太を斜めに組み合わせてかなりの高さのやぐらを作り、それらの間をロープで繋いでありました。また室内放飼場とも自由に行き来できるようになっていて、室内もかなりの広さと高さがあります。キーパートークの後にオランウータン担当のヘッドのスティーブさんに話を聞いたところ、さらに奥に3つの居室があり、夜間は親子を除いてみんな別々に飼育しているとのこと。環境エンリッチメントについて聞いたらとっても熱心に語ってくれました。野生の環境に近づけるために、アリ塚式のフィーダーを用意したり、高さを与えたり、個体間干渉や他種との干渉も良い刺激になると言っていました。


■コンサベーション・エデュケーション
そして最も特筆すべきなのが、これです。1日に7つものキーパートークの時間があり、エデュケーション専門のスタッフ(部門には7人もいるそうです!)が動物の生態のこと、飼育個体のこと、そして絶滅に瀕している現状とその原因、最後には必ず私たちに何ができるかを解説します。オランウータンのところでは急に板を出して、「私たちが使う木材の多くはスマトラの森から来ています。「FSCマーク」の木材を使いましょう」、というアドバイスまでしていました。
そして展示にもそういった姿勢が表れていました。オランウータンの展示の前には「このオランウータンたちはスマトラの森に帰ることは無い。ではどうしてここにいるの?」「それは、もし野生で絶滅してしまったときのため、そして彼らの存在を語る親善大使としているのです。」と書かれていました。またペットとして子どものオランウータンが捕獲されていること、親は当然殺されていることを説明し、オランウータンが好きならペットにしたり芸をさせたりするのではなく、彼らの生息環境を守るために寄付をしたりコンサベーション活動に協力するなどしてください、と、イラスト入りで解説してありました。

またジェントルレムールの展示には、何年に何個体が捕獲され、そのうち輸送中に何個体が死亡し、どの個体がどの動物園に引き取られ、どのように繁殖したのか、その経緯が家系図とともに詳細に書かれていました。

またヘビを使ったプログラムでは、ヘビがペットやヘビ皮の製品として大量に捕獲されているために減少していること、毒を持っているヘビはほんの一部で、憎むべき存在ではないことを説明した後、子ども達をヘビに触れさせていました。

とにかく、今目の前にその動物がいることが、どのようにコンサベーションに関係するのかをしっかり説明する。その姿勢が一貫して感じられました。

そしてもう1つ驚いたのが、来園者の姿勢です。見方を変えればかなり「説教臭い」解説に熱心に耳を傾け、子どもは手を上げて発言し、うなづきながら聞いている。ジャージーという場所柄やイギリスの国民性など様々な理由があると思いますが、こういった来園者がいることも、この動物園を支えている要因なんだろうなぁと思いました。

私たちが今日見たプログラム(7つのうち5つ)は、実は全て教育セクションに所属するサラさんが解説していました。かなりのハードワーク!!でも彼女の語り口に実感と熱意がこもっていて、来園者を惹きつけているのは確かでした。私が少し質問していたら、「スタッフルームに案内するわ」とアイアイの調餌室に案内してくれました。そこで聞いた話はとっても興味深かったです。まずアイアイのためのエンリッチメントグッズ(丸太や竹に穴を開け、そこにミルワームを押し込み紙で蓋をする)について説明してもらいましたが、「これらの木や竹はどこから取ってくるの?」と質問したところ、「園内にたくさん生えているから取って来るの。野菜もオーガニックの野菜を園内の農場で作っているのよ」との答え。え!?園内に農場があるの!?後で見に行きましたが、本当にビニールハウスがありました。専従の職員さんが1人いるのと、ボランティアさんとで、雑草を抜くなどの管理をしているそうです。「動物の健康にも良いしコスト削減になるのよ。」確かに、、、。

さらにびっくりする表現がありました。「いくつくらい教育プログラムを持っているんですか?」と聞いたところ、「30くらいかしら。小さい子ども用と大きい子ども用では違うプログラムだし、環境エンリッチメントについて集中的に学ぶプログラムもあるわ。あとはバースデーパーティーも」。え!?バースデーパーティー!?「バースデーパーティーが教育プログラムなんですか!?」と聞いたところ、誕生日の子が好きな動物を選んで、その動物にまつわるゲーム(もちろんコンサベーションに関わるもの)をするなどして楽しみつつ理解を深めるんだそうです。なーるほど。

ジャージー動物園の公式サイトはこちら↓
http://www.durrellwildlife.org/

 


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