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もう1つ、この動物園で驚いたのがアザラシのプールです。園内見学中、給餌時間でもないのにプールに人が集まっているので、何をしているのだろうと覗いてみると、女の人が1人、浮きの上に立っていました。アザラシたちはネットで仕切られたプールの中を泳いでおり、プールの中には、金属やプラスチックなどでできた変な装置があらゆるところにありました。 女性が指示を出すと、アザラシたちは水面に垂れ下がったざまざまな形をした輪の中に、首を入れて並びました(右写真)。皆、女性の方を向いて指示を待っています!そして次の指示で、1匹のアザラシが水中の扉に向かい、すかさず女性が扉の紐を引っ張り、その個体だけがネットの仕切りからすべり出ました。他のアザラシも扉から出ようとしましたが、すぐに扉は閉められ、未遂に終わりました。「チェッ」と言うような声が聞こえてきそうな動きと表情です。 すべり出た1匹は、別の女性二人がいる場所へと泳ぎ、水中に設置されたネットの上に体を置きました(左写真)。そして、金属の輪の中に鼻先を入れ、指示を見て、右や左に鼻先を動かしています。どうやら認知実験がおこなわれているようです!動物園でこんな光景に出会うとは、思いもよりませんでした! |
掲示などを確認して(ドイツ語でしたが)、ボーフム市のルーア大学がケルン動物園に「海洋科学センター(Marine Science Center)」を設置しており(右写真)、その研究者が実験をおこなっているということがわかりました。そして、プール内に置かれているさまざまな装置は、その実験用であり、奇妙に見えた装置は、ジョイステックだったりプラネタリウム(!)だったりすることがわかりました(左写真)。 海洋科学センターは、アザラシのプールのすぐそばにある小さな建物で、室内には書籍が詰まった本棚とパソコンが整備されていました。実験は、基本的に常に来園者に公開されているそうです。ホームページには研究成果なども記載されていました。インターンも受け入れているそうです。アザラシの賢さにも驚きましたが、そうした体制つくりにも驚きました。 |
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ケルン動物園の今一番の話題は、アフリカゾウです。2004年にオープンした2haのゾウ舎が、全敷地面積(20ha)の1割を占めることからも、ケルン動物園のゾウに対する意気込みが感じられます。 この施設ではゾウの群れ飼育と繁殖を目指していて、2006年3月30日には待望の赤ちゃんが生まれました。その女の子はマーラー(Marlar)と名付けられ、大人気になったそうです。私が訪問したときも、来園者から「マーラー」と名前を呼ぶ声が聞こえていました。ゾウ舎の様子をwebカメラで常に公開していたり、12月にマーラーの母親が死亡し母親の友人たち(妊娠中で授乳が可能だった)によって育てられたりなど、話題も多かったようです。園内には「マーラーはこんなに大きくなりました」といった実物大の看板も立てられていました。(現在もゾウ舎の様子はwebカメラで公開中だそうです) |
広大な屋外放飼場では写真が撮りにくいので(左上写真)、屋内放飼場に移動した頃をねらって訪問しました。屋内放飼場は広く、天井も高く、ゾウたちは床に置かれた餌を食べていました(右上写真)。 マーラーと思われる個体もいました。現在は、2007年4月16日に生まれたミン・ユン(Ming Jung)と、5月9日に生まれたマー・クマリ(Maha Kumari)が小さな体で遊びまわり、とてもかわいかったです。二人は、マーラーに遊びかけたり、餌を食べているオトナの周りを追いかけっこしたりして遊んでいました(左写真)。そのうち疲れたのか、大鋸屑が山盛りにおいてあるところに倒れこみ、二人して寝てしまいました(右写真)。二人が一緒の格好をして眠る姿は本当にかわいかったです。また、それを見守る大人のゾウたちの優しさも、見ている私たちに伝わってきました。 日本のゾウは単独飼育だったり、せっかく子供が生まれても人工保育だったりで、なかなかこういった姿は見られません。でも、母系の年齢の違う個体同士が1つの群れで暮らし、支えあって生きるのが、ゾウ本来の姿のように思えます。飼育下でそれを実現するのは難しいかもしれませんが、ぜひぜひこうした姿に切り替わって行ってくれればと思います。 |