Bronx Zoo
ブロンクス動物園


報告者は 落合知美
訪問日は、2005年7月29日(金)と8月2日(火)です。

それぞれの写真をクリックすれば大きい写真を見ることができます。

 ニューヨーク市にあるアメリカでも有名な動物園です。その名のとおり、マンハッタン北側のブロンクス地区に位置します。マンハッタンからは地下鉄2番もしくは5番に乗って「West Farms Sq.-E Tremont Av.」駅で降り、電車の進行方向に向かって5分ほど歩くとアジア門から動物園に入ることが出来ます(一駅先の「Bronx Park Av.」駅まで行ってしまうと、結構歩かなければならないので注意!)。以前(1997年)に来たときは、動物園近辺の治安が悪く、動物園に一人で行くには注意が必要でした。現在は治安も良くなり、昼間なら女性一人で歩いても大丈夫なようです。

 この動物園は1899年に開園し、野生生物保護協会(WCS)により運営されています。265エーカーという広大な敷地に、約4000匹の動物が飼育されています。入園料は12ドル(約1500円)と少々高く、モノレール(3ドル)やスカイサファリ(2ドル)、バタフライガーデン(3ドル)、コンゴ・ゴリラの森(5ドル寄付)、子供動物園(3ドル)などは別料金が必要です。それらの料金がセットとなった「Pay-One-Price(POP)パス」は、17ドル(約2000円)で販売されています。毎週水曜日は寄付金(無料もOK)だけで園内に入れますが、園内の施設利用には別料金が必要です。

 私は今回、全施設の写真を撮るため2日にわたって訪れました。ここではその中から、「コンゴ・ゴリラの森」と「ジャングルワールド」を紹介します。


コンゴ・ゴリラの森 Congo Gorilla Forest

 コンゴ・ゴリラの森は、1999年にオープンしたブロンクス動物園南西の端に位置する施設です。中央アフリカの熱帯雨林を模した6.5エーカーの土地に、ゴリラやオカピといった哺乳類から、両生類や爬虫類、昆虫など、ここだけで300以上の動物を飼育しています。

 施設は、「熱帯雨林の小道」「コロブスたちの木」「オカピジャングル」「マンドリルの森」「ゴリラとの出会い」などのテーマに分かれており、入口からの小道を進んでいけば、こうしたテーマに沿って動物たちが見られる仕組みです(写真左の地図参照)。

 まずは入口にて5ドルの入園料を払います(写真右)。近くにある看板には、「入園料はアフリカの保護活動に使われます。展示の最後で、どういった保護活動にお金を使うか選んでください。」と書かれています。すでに入口からアフリカの雰囲気作りがされており、くねった小道の先は緑や岩、擬木などで見えません。来園者は、今から森の中に分け入っていくという感じです。

 小道を進むと、動物たちの「糞」や「食痕」、「スイギュウの頭蓋骨」、「アリ塚」、「樹皮が剥がされた大木」など(の作り物)をあちこちに発見します。看板には、それからわかることが絵入りで説明されています。来園者は、こうした発見や解説に促され、地面を見たり、木の上部を見たり、遠くを見たりするようになります。まるで、アフリカの熱帯雨林に分け入る調査員さながらです。(例えば、左の写真の木は作り物で、上のほうにゾウが樹皮を剥がした跡があります)

 小道沿いにあるオカピやアビシニアコロブスなどの展示も、緑や岩がうまく配置され、開放感があります。オカピ展示の前には、WCSがコンゴ民主共和国(旧ザイール)で取り組む調査・保護活動についての説明板がたくさんありました。マンドリルとカワイノシシが混合飼育された展示(写真右)は、WCSが活動するガボンのロペ保護区に似せて作ってあるそうです。

 その先には「熱帯雨林の宝物」という室内展示があり、熱帯雨林に住む動物たちや地球における役割が説明されていました。部屋の中は薄暗く、現地に生息する数種類のカエルの鳴き声が流れています。部屋の片隅には実物大のカエルの模型が置かれ、現在鳴いているカエルの前のランプが点灯するしくみになっていました。

 次に「コンサベーションシアター」という部屋に入りました。椅子に座って目の前のスクリーンに映し出される映像を見ます。チェーンソーによって切り開かれていく森林や、殺されるゴリラたちが映し出されます。こうした映像が終了すると、スクリーンが上がり、カーテンが開かれ、明るい光がさしこみ(写真右)、ゴリラの放飼場が広がります。やっと、ゴリラと対面です!

 ガラス越しに、小川や丘、植物のある放飼場が広がります。その中で、ゴリラが群れで暮らしています。コドモのゴリラは遊びまわり、オトナのゴリラは木のそばでくつろいでいます。くつろぐゴリラの横を、カモの親子が通り過ぎます。時々、リスも走り去っていきます。

 この動物園には、2群(7個体と8個体)のニシローランドゴリラが暮らしているそうです。コドモのゴリラもたくさんいました。1956-1998年の40年ほどで、43個体以上のゴリラが生まれたそうです。

 来園者側に擬岩が突き出ている場所がありました。来園者は擬岩にある穴をかわるがわる覗き込んでいます(写真右)。私も覗き込んでみると、すぐ目の前にはゴリラの顔が!!ゴリラも反対側から穴の中を覗き、次々と顔を入れる来園者を見ては楽しんでいるようです。

 ゴリラの放飼場を横切る両側ガラスの通路(写真左)を抜けると、モニターが並ぶ暗い部屋に出ました。モニター画面では、最初に払った入場料をどの動物のどういった保護活動に使いたいか、タッチパネルで選ぶことができます。私は「ゴリラ」と「研究(discover)」を選びました。「チャリン」とお金の落ちる音がして、終了しました。部屋を出ると、この展示全体を振り返る掲示があり、その小道を歩きながら余韻を楽しむことができます。そして、最後はお土産が並ぶゴリラショップとなっていました。

 この展示の詳細については、「いま動物園がおもしろい」(市民ZOOネットワーク著)に書かれています。また、コンゴ・ゴリラの森のサイトでも詳しく見ることができます。


ジャングルワールド Jungle World

 1997年にもブロンクス動物園へ行ったことがあるのですが、その時に印象深かったのがこの「ジャングルワールド」という室内展示です。それまで、“広場に柵(建物)があり動物がいる”といった日本式展示(?)しか知らなかったので、室内に緑があり、水があり、動物がいるこの展示方法にはびっくりしました。今回は、動物の種類から飼育空間の配置まで、しっかり見ようと訪れました。

 ジャングルワールドは、アジア門から入ってすぐのアジアゾーン(写真左)にあります。3400屬良瀉呂法99種780匹の動物が飼育されています。建物の中は、「低地林」「マングローブ林」「常緑熱帯林」などのゾーンにわかれ、1本の小道がそれらを通ってぐるりと回る配置になっています。

 入口から続くウッドデッキを歩くと、右手にキノボリカンガルー、左手にビントロングが見えます(写真右)。どちらも擬木の上にいるので、目線と同じ高さで動物を見ることができます。先に進むと暗い部屋になっていて、水槽があります。水槽の中にもマングローブの根が張り、水の中で生きる動物たちを見ることができます。

 その先は再び明るく開け、マングローブ林の擬木にエボニーラングールの群れが住んでいました(写真左)。以前は、ここにテングザルのペアが住んでおり、それがとても格好よかったので、とても残念でした。しかし、水面には以前と同様にコツメカワウソが泳いでおり、コツメカワウソとラングールが戦って(遊んで?)いました。どっちが優勢ともいえないそのやり取りは、見ていてとてもおもしろく、長々と見物してしまいました。

 その先は再び暗くなり、滝の内側からシルバールトンが暮らす場所に出ました。また、その次の角を曲がれば、右手には木の上で休むクロヒョウ、左手にはマレーバクの展示が見えます。マレーバクの頭上には枝が張り出し、ツルが垂れ下がり、ホオジロテナガザルのオスとメスが自由に行き来していました(写真左)。

 建物の中は、全体に霧がかかり、水の流れる音や滝の音、鳥の声、そして時々テナガザルの声が響き渡ります。また、植物や岩の配置、動物の位置などが工夫されているので、平坦なウッドデッキを歩くだけで、動物を見る目線や建物の印象がさまざまに変わり、楽しめます。こうした技術、そして10年以上経つ施設なのに洗練さを失っていないことを、すごいと感じました。しかし動物を飼育するという観点から見ると、来園者からの目線を考えつくしているがために動物の行動が制限され、移動できる空間もかなり狭いのが、かわいそうに思えます。


感想

 ブロンクス動物園を運営する野生生物保護協会(WCS)には、動物園のスタッフのほかに、生息地で野生動物の調査をしている研究者や園内デザインなどを担当するグラフィックの専門家などがいます。上記どちらの展示も、こうしたプロフェッショナルたちが関わって作り上げ、維持されているものだと実感しました。

 WCSの保護活動は、世界各地50ヶ所以上でおこなわれているそうです。また、野生マウンテンゴリラの研究で有名なジョージ・シャーラーをはじめ、一流の研究者が雇用され働いてきたという歴史もあります。2001年には、WCSが活動するコンゴ共和国のヌアバレ・ンドキ国立公園で、水を嫌うと考えられていたゴリラが湿地で胸まで水に浸かり水草を食べる行動が発見され、日本でもニュースになりました。こうしたことは、動物園が野生の保護・研究活動と密接に関係していることを実感します。

 デザイン面でも、日本との格差を感じます。園内でトラのフェイスペインティングをした少女に出会いましたが、とても素敵でびっくりしました(写真右)。またオープンしたばかりの「バグズカルーセル」は、昆虫のメリーゴーランドですが、コオロギやカブトムシなどの形をしていて、大人もついつい興味を持ってしまう完成度の高さです(写真左。地下鉄の広告より)ゴリラの放飼場では、草やツルに見える電気柵も、とても自然に見えます(写真右)。園内のお土産もおしゃれで、動物好きな大人が買えるものがたくさんあります。 

 一方、あまりにも「きれい」で「できすぎている」と言う気もします。多くの来園者は目隠しされた電気柵や堀に気付かず、「広い緑の中でのびのびと動物が暮らしている」と思うのではないでしょうか?来園者に向けて、そうした騙しの手法が必要かどうかが疑問です。そういった点で、私が動物園に求める方向とは少し違うようです。

 でも、「専門家」のほとんどいない日本の動物園では、この議論のレベルまでまだまだ到達していないのが現状だと思います。ぜひ、一度は見ておきたい動物園です。


公式ホームページはこちら http://www.bronxzoo.com
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