正田陽一先生をしのぶ~正田賞創設記念~

正田賞について

 2022年創設の「正田賞」は、エンリッチメント大賞に応募された取り組みの中から、市民に対して動物福祉を伝えるという意味で高く評価される内容や、市民との連携という意味で優れた取り組みと評価されるものを賞するものです。
 「正田賞」という名前は、正田陽一先生のお名前にちなんだものです。このページでは、正田先生の足跡をご紹介させていただきます。

2015年撮影。上野動物園にて。

正田先生について

 正田陽一先生(東京大学名誉教授)は、2002年にエンリッチメント大賞を始めた時から2016年にお亡くなりになるまで、ずっと審査委員を務めてくださいました。東京動物園ボランティアーズTZVの初代幹事長で、お亡くなりになるまで顧問を務めていらっしゃいました。専門は畜産学(特に家畜育種学)でしたが、動物園での種の保存や教育、市民連携など幅広く活躍され、動物福祉と同時に、人々が楽しめる場としての動物園づくりにも強い関心と深い理解をもっていらっしゃいました。

1927年3月31日 東京に生まれる
1950年 東京大学農学部畜産学科卒業。同大助手、助教授を経て、1979年教授。専門は家畜育種学
1974年 東京動物園ボランティアーズ(TZV)初代幹事長
1981年 (財)東京動物園協会評議員、理事、副会長などを経て2006年顧問。
1987年 茨城大学農学部教授(~1992年)
2002年 エンリッチメント大賞審査委員
2004年 TZV会長(~2015年退任し、顧問に)
2016年12月30日 逝去。享年89歳。

「正田賞」創設記念対談動画

 正田賞の創設を発表したのは、エンリッチメント大賞2021の表彰式でした。正田先生にゆかりの深い川端裕人さん、日橋一昭さん、本田公夫さんによるオンライン対談を実施。 正田賞の趣旨はもちろん、正田先生を偲んで語られるエンリッチメント大賞や東京動物園ボランティアーズをめぐるエピソードの数々をご覧ください。

正田先生名言集

多くの文章を遺された正田先生。ここで、その一端をご紹介します。

現代の動物園を考えるにあたって、私の印象に残っている言葉が3つあります。「ハンズオン」「ランドスケープ・イマージョン」、そして「エンリッチメント」です。私はこの中で一番大切なのが「エンリッチメント」だと考えています。

(2015年、市民ZOOネットワークニューズレター vol.40より)

動物園ボランティアの受ける最大の報酬は、こういう物質的なものではなく、精神的な満足感であることはあらためて言うまでもない。質問に答えたり、解説を語り終えた後で、子供たちの笑顔が返ってくれば、その時の喜びは何者にも代えがたい。大好きな動物を仲立ちとして、いろいろな人たちとの出会いが楽しめる-これが動物園ボランティアの最大の報酬であろう。

(2006年、「動物園とボランティア」畜産の研究, vol.60, no.1より)

動物を自分の目で直接見る、そして接するということの意義はきわめて大きい。カラーテレビの画像がいかに鮮明になろうとも、それで動物園で観察し体験することを代行できるものではけっしてない。

(2000年、「動物園における展示のあり方」『動物園というメディア』より)

遺伝資源保全に盡(つく)すよりも、教育活動の面を通して資源保全の重要性を認識させ、普及させることが大切であろう。そして、教材としての個体を常時繁養することにより、(中略)生息域内での保護を間接的に支援することが望ましい。

(1993年、「動物遺伝資源の保存と動物園の役割」畜産の研究, vol.47, no.3より)