BROOKFIELD ZOO

佐渡友 陽一(&章子)



#2
Living Coast:ストーリー展示(※)でメッセージを伝える


海にDive In !!
 Living Coast はちょっとした水族館のような建物になっています。一番最初にあるのは"Dive In ! (飛び込もう!)"文字。扉を開けるとそこはまるで海の中。いきなり外洋に放り出されてしまった私達が、エイやクラゲを見ながら海藻の間を進んでゆくと…

ウミガメ〜外洋〜
 そこにいたのはウミガメ。展示の横のハンズオン・コーナー(写真左側の明るい部分)では、ウミガメの一生を体験できます。卵から生まれたばかりの私達は、鳥のくちばしやカニのはさみをかいくぐり海に出ます。ようやく海に出た私たちは、波間を漂うクラゲを食べようとしますが、クラゲに混じっていたのはなんとビニール袋。大人になって産卵のために砂浜に上がろうとすると、防波堤に邪魔されたり、街灯に惑わされて帰る方向を間違えたり…ウミガメも楽じゃありません。でも、最後にはそんな私達を助けてくれている人たちの活動も紹介してくれていました。

フンボルトペンギン〜岸辺へ〜 
 そこからだんだん波が打ち寄せる岸辺に近づき、私達はフンボルトペンギンとインカアジサシが巣を作っている岸壁に到着しました。よくテレビで見る氷の上のペンギンと違って、フンボルトペンギンはグアノ(糞化石)と呼ばれる地面などに素穴を掘って暮らしています。その一角には木造の小型漁船と網の残骸もあったりして、すぐそばに人が住んでいることが窺われます。最近は、巣穴を掘るのにちょうどいいグアノを人間が肥料にするために持っていってしまったりして、野生のフンボルトペンギンは絶滅の危機まで取りざたされているんです。
 
ここでも私達の人生を掛けたチャレンジが待っていました。名付けて"フンボルトペンギン双六"。まず、私達はサメや漁船の間をかいくぐって餌を探さなければいけません。たとえ、魚がたくさんいても、シャチの近くに行ってはいけません。次に、巣穴に帰ってきたら、鳴き声でつがい相手を捜さなければなりません。実際、ペンギン達は鳴き声で夫婦や親子を憶えているんですから。しかし、この鳴き声当てゲームは、にわかペンギンの私達にはちょっとした難関。他の鳥やアザラシの声は聞き分けられるとしても、あなたは自分の奥さんと他のペンギンの声をちゃんと聞き分けられるでしょうか?
 
なんでこんなにフンボルトペンギンに力を入れているのかと思えば、この動物園は北米のフンボルトペンギンの種保存計画(SSP)の調整者を出しているそうなんです。それにしても、フンボルトペンギンを説明する看板が、いきなり"Humboldt penguins need Brookfield Zoo.(フンボルトペンギンはブルックフィールド動物園を必要としている)"で始まるのはちょっとびっくり。でも確かに、放っておくと絶滅しかねない彼らですから、動物園がしっかりフンボルトペンギンを飼い続けていることは必要かもしれませんね。

まとめ:環境保全と動物園支援のお願い
 人間の影響で四苦八苦している野生のウミガメやフンボルトペンギン。Living Coast最後のコーナーは、そんな彼らを救うために私達にできることを伝えるハンズオン・コーナーです。
 
まずブルックフィールド動物園がフンボルトペンギンを助けるために頑張っている種の保存計画や、飼育下の栄養研究などが展示されていて、そんな動物園をどうすれば私達が支援できるか強調されています。具体的には、入園料を払う・お土産を買う・帰って動物園の話をする・動物園のメンバーになる・ボランティアになる、などです。

   

 次の展示は、台所を模したコーナーのあちこちに、海からの生産物を隠してあります。テーマは海と生活との関係。さらに湖(=シカゴはミシガン湖沿岸)と海の関係と保全を述べており、すぐできる環境保全の方法を色々と学べるようになっていました。

(※)ストーリー展示とは
 従来の生態的展示あるいはランドスケープ・イマージョンでは、生態系に"浸し込む"ことが主な目的であり、周辺的なパネルなどで生態系保護へのメッセージなどを掲げても、「だから何をして欲しいのか」という解決策の部分が希薄でした。つまり、生活に密着したレベルでの動物園からのメッセージに欠けていたのです。一方で、まとまったメッセージを発信できる教育プログラムは、頑張っても年間数千人しか相手にできません。この数字は、年間数十万〜百万という来園者の数に比べると1%になるかならないかに過ぎません。
 これらの問題に解決の方向を与えたのが、「ストーリー展示」と私が呼んでいる手法です。これは、いくつかの展示を連ねて起承転結を織り込んだもので、要所要所の展示で情報提供とともに問題提起を行い、最後には動物園からの解決策の提示があります。この手法を初めて私が見たのは、ブロンクス動物園の「コンゴの森」でした。これは2グループのゴリラやオカピを盛り込んだ豪華かつ広大な展示で、またストーリーに展開を与えるために巨大スクリーンを使ったりしています。上記のLiving Coast もフンボルトペンギンのSSP(アメリカの種保存計画)調整者を出しているブルックフィールド動物園の蓄積を存分に発揮し、かつ生活レベルからの環境改善を呼びかけている画期的な展示と言えます。

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