動物たちの豊かな暮らし
エンリッチメント大賞 2009
動物たちのQOLを高める施設が受賞!
今年で第8回目を迎えたエンリッチメント大賞2009には、全国から56件の応募(49件の取り組み)がありました。7月下旬から8月にかけて一次審査の書類選考を通過した11件について、市民ZOOスタッフによるヒアリング調査を実施しました。二次審査である審査委員会が開催されたのは9月13日。今年は以下の3つの取り組みを大賞として表彰することとしました。
大賞に選ばれた3つの取り組みは、どれもそれぞれの動物のニーズにあった飼育環境を整え、そこで暮らす動物たちのQOL(生活の質)を高めるものである点が共通しています。飼育下に多様な環境を用意して、動物自身がその時々でより快適で心地よい場所を選択することができるような工夫がなされています。
> 募集の詳細はこちら(募集終了) > 応募総数と審査方法
あざらし館のプール凍らせ作戦
旭川市旭山動物園 [北海道]
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〒078-8205旭川市東旭川町倉沼
tel: 0166-36-1104 / fax: 0166-36-1406
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/
【審査委員コメント】
あざらし館はアザラシの垂直方向に泳ぐことのできる性質を活かした施設として、2004年に、エンリッチメント大賞特別賞を受賞しました。マスコミでも大きく取り上げられ、国内外から注目を集めています。この成功に安住せず、アザラシが豊かに暮らせるよう、野生での行動を更に引き出す努力をした点が高く評価されました。冬季の厳しい環境を逆手にとりつつ、3年間に渡って様々な工夫を重ねて、循環型プールの水を凍らせることに成功しました。これにより、アザラシたちはプールやマリンウェイを泳いだりすることに加えて、氷にあいた穴から顔を出したり、氷の上で寝そべったり、様々な環境を選択することができるようになりました。今後も、こうした北海道ならではの環境を活かした自然な飼育環境づくりを様々な動物種で見られることを期待します。
>応募者のコメント >受賞の声
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チンパンジー舎
京都市動物園 [京都府]
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〒606-8333 京都市左京区岡崎法勝寺町
tel: 075-771-0210/ fax: 075-752-1974
http://www5.city.kyoto.jp/zoo/
【審査委員コメント】
限られた空間・予算の中で、チンパンジーという種に特徴的な能力である「知性」、「好奇心」、「学習意欲」、「社会性」を発揮できる施設を作った点が評価されました。室内展示場を改築した「学習室」で、研究者が認知研究を実施している点が非常にユニークで、チンパンジーたちも、喜んで自主的に学習に取り組んでいます。また、ここで過ごす時間が生活のアクセントとなり、チンパンジーにとってより心豊かな社会性が育まれていることも注目に値します。大学と連携して、動物の持つさまざまな魅力を引き出す施設として変化していこうとする京都市動物園と動物園のスタッフの姿勢は賞賛に値します。チンパンジーたちの学習能力の発展やそれぞれの個性をどのように見せていくことができるか、この新しい取り組みの今後の展開が楽しみです。
>応募者のコメント >受賞の声
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水辺で暮らすカピバラのエンリッチメント
長崎バイオパーク [長崎県]
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〒851-3302 長崎県西海市西彼町中山郷2291-1
tel: 0959-27-1090/ fax: 0959-27-1196
http://www.biopark.co.jp/
【審査委員コメント】
日本最多数のカピバラを飼育している長崎バイオパークでは、カピバラたちは一頭の雄を中心とした大きな群れで、水辺で暮らしています。これは野生での生活形態に非常に近く、例えば、群れの中の複数の母親が共同で子育てを行う習性が発揮できるため、人工哺育が不要であることや、十分な広さ・深さの水場を与えることで泳ぐ、潜るといった行動を発現できることにつながっています。さらに、「露天風呂」を設置したことで冬季の課題であった皮膚の乾燥や疾病を予防できるようになりました。空きスペースや混合展示の手法を活用することでいわゆる余剰個体にも快適な暮らしを提供しています。ここに暮らすカピバラののどかでゆったりとした様子や繁殖率の高さは、快適な環境のため、ストレスが軽減されているからだと推測されます。次々と繁殖を成功させているカピバラたちの血統管理が、今後の課題といえるでしょう。
>応募者のコメント >受賞の声
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惜しくも受賞にはいたらなかった取り組みについても、それぞれが動物たちの幸せのために工夫を凝らしたものでした。これらついてもエンリッチメント図鑑でご紹介しますので、あわせてご覧ください。
市民ZOOネットワークでは、環境エンリッチメントの試みを、市民が理解し、評価し、応援する社会づくりを目指し、今後もエンリッチメント大賞を継続していきたいと思っています。