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動物たちの豊かな暮らし

エンリッチメント大賞 2012

「エンリッチメント大賞2012」大賞発表!
新しい指針を示すエンリッチメントが受賞!
  ―エンリッチメント第2章がはじまる―


 エンリッチメント大賞は11年目を迎えました。今年は全国から53件の取り組みに対して58通の応募があり、そのうち13件が一次審査を通過しました。一次審査を通過した取り組みについては、スタッフが現地を訪問したり、関係者にインタビューを実施するなどの追加調査をおこないました。その結果をもとに、9月23日に審査委員会(二次審査)が開催され、3件が大賞に選ばれました。

  今回受賞した取り組みは、単に現場でのエンリッチメントの実践やエンリッチメントを活用した施設作りに留まらないものでした。それぞれがその動物における過去の飼育展示方法の“常識”を乗り越えて、その種の今後の飼育展示に対して明確な方針を持ち、その実践においてエンリッチメントを当たり前のように導入している点が評価されました。また、いずれも複数年度にわたって何度も応募があったものであり、継続して取り組みに挑戦し続けたことでも注目されました。今回受賞した3件は、今後の動物園・水族館の飼育展示のあり方の一つを示していると言えるでしょう。エンリッチメント大賞が始まってから10年が過ぎ、動物園・水族館でのエンリッチメントの取り組みの、“第2章”が始まるにふさわしい受賞となりました。

 

> 募集の詳細はこちら(募集終了)
> 応募総数と審査方法
> 一次審査を通過した取り組みについて


日立市かみね動物園

「チンパンジーの森」の植樹祭と群れづくり


【審査委員コメント】
 チンパンジーの飼育施設における、「植樹祭」と「群れづくり」を何年にもわたって継続してきた努力と、その成果が表われ始めていることが評価されました。
 「チンパンジーの森」は2008年にオープンした施設です。それまでのコンクリートで囲まれた施設から、土と緑とタワーからなる環境になりました。動物園はこれを“完成”とせず、毎年1回、小さな森づくりを目指した植樹祭を開催し続けてきました。来園者がチンパンジーの運動場の中に入り、自分たちで持ち寄った木を植えることができるこのイベントは、来園者参加型エンリッチメントと言えます。自分が植えた木を、チンパンジーたちが食べたり、折って遊んだり、ベッドを作ったり、あるいは日陰として利用したりするようすを観察することで、来園者自身がチンパンジーのエンリッチメントに関わったという実感を得ることができます。そして4年間の継続した取り組みにより、チンパンジーのニーズや好奇心を満たす「森」に少しずつ近づいています。
 群れづくりの面では、父系の複雄群で暮らすチンパンジーの生活に近づけるためにオス親子とメス1個体を飼育していたところに、メス3個体を順次導入しました。各個体に合わせた導入手順と適切なケアで、社会行動に問題があった個体も、群れ入りに成功しました。また、これまでの3回の出産で毎回育児放棄をした経歴を持つ母親がいったんは人工哺育となった我が子を抱くようになり、こどもは1歳4ヶ月という記録的なスピードで群れ復帰しました。社会行動に問題のあったメスの、高齢初産の日本記録となる34歳での出産にも成功しています。今までのチンパンジー飼育の常識を覆す実績を残しました。
 以上の取り組みは、チンパンジーに対する深い知識と担当者の努力、周囲のサポートがあってこそ成功したものと評価されます。今後の植樹祭の継続はもちろん、残る人工哺育個体の群れ復帰など、更なる努力と挑戦を続けていかれることを期待します。

日立市かみね動物園
(ひたちし かみね どうぶつえん)
http://www.city.hitachi.ibaraki.jp/index.html?id=2
〒317-0055 茨城県日立市宮田町5-2-22
tel:0294-22-5586 / fax:0294-22-5596

>応募者のコメント >受賞の声

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埼玉県こども動物自然公園

シカとカモシカの谷


【審査委員コメント】
 シカとカモシカという日本産動物を、園内に残る原生の雑木林を存分に利用して飼育し、現在起こっている野生動物問題を提示するといった、従来の動物園の展示の概念にとらわれない設定が評価されての受賞となりました。
  エンリッチメントを考える上で重要な点の一つに、動物の生息環境の再現(景観という意味ではなく)があります。ホンシュウジカとニホンカモシカにとって、木が生い茂り勾配のある雑木林は、生息地の環境そのものであり、究極のエンリッチメントと言えます。しかし、こうした取り組みと「動物を見せる」ことを両立させるのは非常に困難です。シカとカモシカの放飼場は合わせて約5000屬△蝓動物園の展示空間としてはとても広い面積で、環境維持のため飼育個体数を限定しています。来園者は、もともと自然観察路として使われていたウッドデッキを歩きながらシカやカモシカを探すことになりますが、自らが“森の中”に入ることで、動物を近くで見るという欲求が制御されたような環境となっています。
 シカの放飼場では、地上に緑が少ないことが分かります。放飼場の内外の森の下草や低木の違いに注目を促す看板を設け、現在日本各地で起こるシカの“食害”問題を提示しています。これはまさに「フィールドミュージアム」に近い手法であり、将来の動物園展示の一つのあり方を示唆していると評価されました。
  また、ただ空間を囲い込むだけでなく、樹木の適正な間伐をおこなって下草の生育を促し、同時に間伐材を食餌として利用しています。給餌器を設置し植物、そして森林への負担を軽減し、適正な環境の維持にも努めています。日本産の動物、それも本来その地域に生息する種類に限定して飼育する、などのこだわりも評価されました。今後も、身近な日本産動物に対する豊かな飼育環境の維持に力を注ぐとともに、教育、環境保全に貢献する取り組みをおこない、動物園の展示の概念を覆す試みが継続されることを期待します。

埼玉県こども動物自然公園
(さいたまけん こども どうぶつ しぜんこうえん)
http://www.parks.or.jp/sczoo/
〒355-0065 埼玉県東松山市岩殿554
tel: 0493-35-1234 / fax:0493-35-0248

>応募者のコメント >受賞の声

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秋吉台自然動物公園サファリランド

大空を飛ぶアフリカハゲコウ


【審査委員コメント】
 アフリカハゲコウという注目されることの少ない種ですが、運動不足解消と野生本来の行動の発現を目的としてフリーフライトに取り組んでいることが評価されました。
 動物園で飼育されている鳥類の多くは逃亡防止のため、ケージ内で飼育するか、風切羽を切断(切羽)してうまく飛翔できないようにしています。アフリカハゲコウも、切羽が施されてオープンスペースで飼育されることが多い鳥でした。地上だけでの生活でも長生きする丈夫な鳥であるために、繁殖の試みもほとんどありませんでした。このような飼育方法が一般的であったアフリカハゲコウを、フリーフライトではばたかせ、飛翔後は園内の虫をつついたり草むらをあさったりして飼育場所まで帰らせています。厳冬期を除くほぼ毎日、ケージの外でのトレーニングの時間を設け、担当者の笛の音を合図に近くに飛んで来ます。大型の鳥の、大空をはばたく本来の行動や生態をうまく引き出した、迫力のある飼育方法と評価されました。市街地から離れた秋吉台の大自然の中という、立地条件を存分に生かした取り組みである点も注目されました。2個体のハゲコウに対し4人のスタッフが飼育に携わり、時間をかけてトレーニングしているのも評価されたポイントです。切羽をしないことで、高所への巣作りや正常な交尾などのその種本来の行動を引き出すことにもつながり、日本初のアフリカハゲコウの繁殖成功にも期待が寄せられています。
 実はこの取り組みでは、かつて2回、メス個体が上昇気流で園外に飛ばされてしまうという事件もありました。一般に動物園では、このような事件があると取り組みを中止するなどの結論を出しがちですが、発信機をつける、フライト後の餌の量を多くするなどの防止対策を立て、この取り組みに挑戦し続けています。今後も、ハゲコウの持つ能力と魅力を引き出せるような、さまざまな工夫に挑戦されていくことを願います。

秋吉台自然動物公園サファリランド
(あきよしだい しぜんどうぶつこうえん さふぁりらんど)
http://www.safariland.jp/

〒754-0302 山口県美祢市美東町赤1212
tel:08396-2-1000 / fax:08396-2-1005

>応募者のコメント >受賞の声

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 惜しくも受賞にはいたらなかった取り組みについても、それぞれが動物たちの幸せのために工夫を凝らしたものでした。これらについても適宜エンリッチメント図鑑でご紹介していきますので、あわせてご覧ください。


 市民ZOOネットワークでは、環境エンリッチメントの試みを、市民が理解し、評価し、応援する社会づくりを目指し、今後もエンリッチメント大賞を継続していきたいと思っています。

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