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動物たちの豊かな暮らし

エンリッチメント大賞 2010

「エンリッチメント大賞2010」大賞発表!


 エンリッチメント大賞も今年で9回目を迎えました。今年は全国から48件の取り組みに対して57件の応募(いくつかの取り組みには、複数の推薦がありました)があり、そのうち12件が一次審査を通過しました。
 一次審査を通過した取り組みについては、スタッフが現地を訪れたり、関係者にインタビューをするなどして、追加調査を実施しました。追加調査の結果をもとに、9月25日に二次審査の場となる審査委員会が開催され、今年は以下の2件が大賞に選ばれました。
 大賞に選ばれた2件の取り組みは、主旨は異なりますが、どちらも長年の飼育下での知見を積み重ねたエンリッチメント技術を応用したものであり、これまでのようにそれぞれの園館内だけの試みにとどまらない、広がりのある事例といえます。

> 募集の詳細はこちら(募集終了)
> 応募総数と審査方法
> 一次審査を通過した取り組みについて


動物園のオランウータンの環境エンリッチメントの技術開発と野生動物保全活動への応用

黒鳥英俊氏(東京動物園協会) 水品繁和氏(市川市動植物園)
木村幸一氏(名古屋市東山動物園) 宮川悦子氏(よこはま動物園)


【審査委員コメント】
 オランウータンはきわめて樹上性の高い動物です。動物園ではどうしても観客の視線の高さに合わせた展示になりがちで、本来は地上で過ごすことがめったにないオランウータンが一日の大半を地上で過ごす例が多く見られました。今回の受賞対象となったオランウータンの飼育員の方々は、動物園のオランウータンの飼育環境の改善に取り組んでこられました。
 その中で、ロープを使って、空中を自在に移動させるという工夫が生まれました。安価な方法として、使用済みの消防ホースをロープとして利用する試みが促進されました。消防ホースを利用したハンモック製作技術や、消防ホースをひねってつかみやすくする技術(通称「水品巻き」)の開発です。さらに、多摩動物公園のオランウータン施設「スカイウォーク」の事例のように、長いロープをオランウータンが渡って飛び地を利用するという大規模に空中を使った展示にもつながりました。
 こうした動物園での取り組みが国際的な注目も浴びました。マレーシア・サバ州で長年に渡り野生オランウータンの研究、保全活動に取り組んできたアンクレナス博士夫妻が、日本の動物園におけるオランウータンの飼育担当者たちによるエンリッチメント技術に着目し、サバ州野生生物局を通じて彼らに保全活動への協力を呼びかけました。現地では、開発により森林が分断され、オランウータンが孤立するという問題が起きています。今回の受賞者4名はその呼びかけに応じ、日本のNGOの協力のもとに、廃材となった消防ホースを現地に持ち込み、分断された生息地の森林をオランウータンが行き来するための吊り橋を製作し設置するなど、実際に現地に赴いて保全活動に取り組みました。2010年7月には、実際に野生のオランウータンがこの吊り橋を渡ることも確認されています。こうした飼育担当者の現地派遣は、勤務する動物園や関係者のバックアップがあって実現したものです。以上、国内の動物園でオランウータンのためのユニークなエンリッチメント技術を開発したこと、それが野生動物保全に応用されたこと、各動物園が飼育担当者を海外の域内保全活動に派遣したことが、今回の受賞のポイントとなりました。

・黒鳥英俊氏の勤務先
東京都上野動物園 教育普及課(とうきょうと うえのどうぶつえん きょういくふきゅうか)
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/
〒110-8711 台東区上野公園9-83
tel:03-3828-5171(代) / fax:03-3828-6475

・水品繁和氏の勤務先
市川市動植物園(いちかわし どうしょくぶつえん)
http://www.city.ichikawa.lg.jp/gre06/1111000001.html
〒272-0801 千葉県市川市大町284番地
tel: 047-338-1960 / fax: 047-339-1210

・木村幸一氏の勤務先
名古屋市東山動物園(なごやし ひがしやま どうぶつえん)
http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/index_pc.php
〒464-0804 名古屋市千種区東山元町3-70
tel:052-782-2111(代表) / fax:052-782-2140

・宮川悦子氏の勤務先
よこはま動物園ズーラシア(よこはま どうぶつえん ずーらしあ)
http://www.zoorasia.org/
〒241-0001 神奈川県横浜市旭区上白根町1175-1
tel: 045-959-1000

>応募者のコメント >受賞の声

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下関市立しものせき水族館 海響館 ペンギン村


【審査委員コメント】
 ペンギン村は2010年の3月にオープンしたばかりの新施設です。国内の動物園・水族館のペンギン飼育担当者が中心となって組織される「ペンギン会議」の協力を得るなど、ペンギン飼育の最新の知見を集約し、設計段階から環境エンリッチメントに配慮した施設づくりを実現していることが評価のポイントとなりました。
 深く潜水できる水深6mのプール、荒波を起こす造波装置、オキアミの水中給餌装置、複雑な擬岩や遊び道具などペンギンたちが水中に誘われるような工夫がほどこされている点や、何パターンもの巣穴を備えて自由に選択できる環境を提供している点など、熟慮を重ねた上で作られた施設であることがうかがえます。もちろんハード面だけでなく、給餌方法や飼育担当者とのコミュニケーションなどソフト面でもエンリッチメントに配慮した工夫がなされています。さらには、ペンギン・レンジャーなどの多様な教育プログラムの実施、フンボルトペンギンの生息地での保全活動なども注目されます。
 ペンギンは水族館でも動物園でも飼育されており、広範な関係者が今後のしものせき水族館の活動を注視することになるでしょう。ペンギンの飼育について長い歴史を持ち多くの実績を残しているしものせき水族館がペンギンの展示・飼育とエンリッチメントについて、今後も更なる力を発揮されることを期待します。

下関市立しものせき水族館 海響館(しものせきしりつ しものせき すいぞくかん かいきょうかん)
http://www.kaikyokan.com/
〒750-0036 山口県下関市あるかぽーと6番1号
tel: 083-228-1100 / fax: 083-228-1139

>応募者のコメント >受賞の声

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 惜しくも受賞にはいたらなかった取り組みについても、それぞれが動物たちの幸せのために工夫を凝らしたものでした。これらついてもエンリッチメント図鑑でご紹介しますので、あわせてご覧ください。


 市民ZOOネットワークでは、環境エンリッチメントの試みを、市民が理解し、評価し、応援する社会づくりを目指し、今後もエンリッチメント大賞を継続していきたいと思っています。

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