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動物たちの豊かな暮らし

エンリッチメント大賞 2015

「エンリッチメント大賞2015」大賞発表!
―「わくわく感」あふれる取り組みが受賞―


 エンリッチメント大賞は今年で14回目。多くの方のご支援のもと、今年も大賞を決定することができました。全国から33件の取り組みに対して42通の応募があり、そのうち10件が一次審査(書類選考)を通過しました。一次審査を通過した取り組みについては、スタッフによる現地調査をおこない、審査委員らによる二次審査(審査委員会)を10月10日に開催しました。その結果、大賞2件、奨励賞1件が選ばれました。
 大賞を授賞したのは、上野動物園と天王寺動物園です。上野動物園は2012年より継続して応募があり毎年審査委員会の話題にあがっていた「ゴリラ」の取り組みが、満を持しての受賞となりました。天王寺動物園では、多様な動物種でエンリッチメントがおこなわれ、それが来園者にまで伝わるようになって来たことが評価されました。マングースやムフロンといったあまりエンリッチメントが注目されない動物種でのエンリッチメントは、今後の飼育においての基本となることが期待されます。奨励賞は、しものせき水族館のテッポウウオの採餌です。テッポウウオという魚類の生態についてだけでなく、餌となるアリについての生態を調べ上げ、行動調査をおこない、エンリッチメントの効果を調べ上げていることが評価されました。
 いずれも動物たちの「わくわく感」が来園者に伝わる素晴らしい取り組みとなりました。また、どの飼育現場でも現状で満足せず、試行錯誤を繰り返しながらさらに高みを目指している各担当者の姿勢が伝わり、大きく評価されました。今後も、動物たちの幸せな暮らしを追求し続ける取り組みに、期待したいと思います。

> 募集の詳細はこちら(募集終了)
> 応募総数と審査方法
> 全応募はこちら[.pdf 99KB]
> 一次審査を通過した取り組みについて


大賞

ゴリラの群れづくり ・飼育改善の継続
(東京都恩賜上野動物園)


【審査委員コメント】
 日本で初めてゴリラの24時間の群れ飼育に取り組み、群れ内での出産、成長という成果が観察されていること、そしてこれらの取り組みが組織として継続されていることが評価されました。
 日本のゴリラが減少の一途をたどっている大きな原因として、幼少期に群れで暮らさなかったことが指摘されています。上野動物園はゴリラの群れ作りをすすめ、日本で初めて2012年から24時間、昼夜を通しての群れ飼育を始めました。これは、「夜間、事故があると管理できない」などといった日本の動物園での“常識”を打破し、海外での飼育基準を取り入れたものと評価できます。また、ロープや藁の追加など物理的な環境改善はもちろん、食事の改善を中心とした科学的な栄養管理を実施し、各個体の適正な体型作りにも取り組んでいます。このような取り組みが、群れ内での出産、育児という結果につながったと思われます。研究者と連携した継続的な観察によっても、子ども達が母親以外のメスと接触を含む関わりを増やしていることが確認されています。これらの取り組みが組織として行われ、飼育担当者が変わった現在も継続されていることも評価されました。
 今後は、「日本のゴリラ飼育マニュアル」の作成を通じて、欧米の先進的な飼育技術や知見を多く取り入れながら、日本の気候風土に合った飼育方法を確立し、国内ゴリラ飼育園のネットワークづくりを進めることを期待します。

東京都恩賜上野動物園(とうきょうと おんし うえのどうぶつえん)
https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/
〒110-8711 東京都台東区上野公園9-83
tel:03-3828-5171

>応募内容 >受賞の声

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大賞

多様な動物種での環境エンリッチメント
(大阪市天王寺動物園)


【審査委員コメント】
 幅広い動物種で、多様なエンリッチメントを試みられていることが評価されました。コビトマングースでは、落ち葉を集めた「がさごそプール」や、給餌遊具を置く「マングーステージ」が設置され、種固有の採食行動を引き出しています。ムフロンでは、突くと餌が落ちる「じゃらじゃらボトル」が活動量を増やし、採食時間の延長に貢献しました。クロサイでは、目隠しや餌の設置法の工夫で固定化した行動の脱化に成功し、行動範囲が広がりました。ホッキョクグマでは、季節によって展示時間や餌の量を変化させるなどの努力で、常同行動が軽減し、繁殖にも成功しました。ジャガーは水辺や沼地を好むため、プールやシャワーを設置しました。ヨウスコウワニでは、湿地を作り、水温や水位・土の量や湿度を制御して、屋外での繁殖を目指しています。いくつかの動物種ではハズバンダリートレーニングも進め、クロサイでは獣医師と協力して無麻酔で採精できる可能性も見えてきました。鳥の楽園では給餌時に笛の音を取り入れ、鳥たちが3200屬△觧楡澆鯣来するようになりました。
 どのエンリッチメントも小さな工夫ですが、不用意なエンリッチメントは事故にもつながるため、動物の生態や個体の性格などを知らなければ成功しません。現場レベルでの小さな地道な努力の積み重ねは、多くの飼育担当者や動物種に波及しており、園内での広がりが見られます。その努力が動物園ファンの理解にもつながっていることが、来園者からの熱心な推薦が近年、大きく増えていることからも分かります。審査委員会でも、動物たちのようすを示す写真や動画から「わくわく感」に浸ることができました。

大阪市天王寺動物園(おおさかし てんのうじどうぶつえん)
http://www.jazga.or.jp/tennoji/
〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-108
tel:06-6771-8401

>応募内容 >受賞の声

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奨励賞

テッポウウオにおける摂餌生態展示
(下関市立しものせき水族館)


【審査委員コメント】
 テッポウウオの特徴的な摂餌行動である「水鉄砲」を常に発現できる機会をつくる斬新なアイデアと、テッポウウオだけでなく餌であるアリの行動についても調査し、エンリッチメントの効果を客観的かつ緻密に評価している点が評価されました。
 テッポウウオは以前から水族館で多く飼育される魚類ですが、その特徴的な摂餌行動は、解説に際して餌を与える時など、限られた時間にしか発現できないことが一般的でした。しかし野生では、テッポウウオはいつ獲物が手に入るか分からない緊張感の中で生活しています。そうした環境に近づけるべく、水槽上部に、餌となるアリを歩かせる回廊を設置しました。
 回廊の高さやアリの投入量・回数などは、繰り返し実験と観察をおこない、試行錯誤の末に現在の方法に至りました。アリの湿度への嗜好性を利用して移動行動を調整したり、アリを透明チューブの外側と内側に分けることで、アリの大量消費を抑えつつ、間断なく摂餌行動を引き出す工夫もされています。その結果、摂餌時間の延長につながっていました。丹念な観察と科学的評価が繰り返されている点も評価されました。
 魚類の「幸せ」は評価が難しく、エンリッチメントの効果も分かりづらいものです。実施された客観的な評価は、まさにエンリッチメントで重要なSPIDERモデルに則ったものであり、魚類のエンリッチメントの新しい形態を期待させるものとして、奨励賞にふさわしいと評価しました。

下関市立しものせき水族館(しものせきしりつ しものせきすいぞくかん)
http://www.kaikyokan.com/
〒750-0036 山口県下関市あるかぽーと6番1号
tel:083-228-110

>応募内容 >受賞の声


 惜しくも受賞にはいたらなかった取り組みについても、それぞれが動物たちの幸せのために工夫を凝らしたものでした。これらについても適宜エンリッチメント図鑑でご紹介していきますので、あわせてご覧ください。

 市民ZOOネットワークでは、環境エンリッチメントの試みを、市民が理解し、評価し、応援する社会づくりを目指し、今後もエンリッチメント大賞を継続していきたいと思っています。

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