動物たちの豊かな暮らし
エンリッチメント概論

導入したエンリッチメントは、本当に動物たちの暮らしを豊かにしているのでしょうか。エンリッチメント導入後はその効果を評価(アセスメント)することが重要です。残念なことに動物は、ここが良いとかあそこが悪いとかを話してくれません。エンリッチメントを正しく評価することは非常に困難です。そこで何らかの尺度を設定し、それを客観的に測定する必要があります。
環境エンリッチメントの評価方法には、ストレスに関連するホルモンの変動を測定したり、繁殖成功率を指標としたりするなどの方法がありますが、環境エンリッチメントの評価測定によく使われるのは、「飼育下の行動を調査し、野生での行動と比較する」というものです。この方法を利用すれば、動物に無理を強いることなく、また、特別な装置や高価な機械を使わずに、評価することができます。松沢(1996, 1999)は、行動の中でも特に“行動のレパートリー”と“それぞれの行動レパートリーの時間配分”を行動学的視点から定量的に表し、それを野生下で得られた知見と比較する方法を推奨しています。
飼育下の動物の行動調査は簡単な行動観察の訓練でマスターすることができます。あなたも行動観察にトライ!
松沢哲郎 1996: 心理学的幸福-動物福祉の新たな視点を考える-.動物心理学研究 46, 1, 31−33.
松沢哲郎 1999: 動物福祉と環境エンリッチメント. どうぶつと動物園 51, 3, 74-77