この度は、市民との連携という取り組みの評価から、「正田賞」を頂くことができ、大変光栄に思っております。 熊本市動植物園は、2022 年 3 月にレッサーパンダ 2 頭(オス1 メス1)を新規導入しました。レッサーパンダは笹(竹の葉)を主食としますが、JAZA レッサーパンダハンドブックに記載されているとおり、時期により笹の状態が変わり、嗜好性もあるため、近隣に竹林がない当園にとっては、年間を通して笹を安定供給することが飼育上の課題でした。そのため、笹の購入先を探すとともに、放置竹林対策に力を入れている熊本県森林組合連合会に相談をしたところ、放置竹林を整備し、それを有効利用することで動植物園のレッサーパンダのためにもなるのはとてもいい取組みだと賛同をいただき、国の事業である「森 林・山村多面的機能発揮対策給付金」(荒れた山里林を地域住民で整備する取り組みを支援 する制度)を利用し、協力する団体を呼び掛けてもらえることになりました。現在4 団体か ら協力が得られ、朝採りの笹を週1回無償で搬入して頂いています。 飼育管理を行っていくなかで、レッサーパンダの笹の嗜好性について、特に孟宗竹を好み、 3 年物の笹、5 年物の笹、竹の上部、下部と好みが時期により異なることがわかってきまし た。そのことを各団体に随時伝えるとともに、実際に見て理解していただくことで、笹の質 も良くなり、時期や嗜好に合わせた新鮮な笹の安定供給が可能になりました。 笹の選択肢を増やし安定供給することは、採食量の増加、毛艶・ボディコンディションの 良好さを保つことにつながり、笹の採食量と触診によるボディコンディション、目視による 毛艶、糞便の状態が連動していることもわかりました。 また、余剰の笹はゾウ、サイ、カピバラなど他の草食獣の採食エンリッチメントとしても 役にたっています。 協力していただいた団体からは、荒廃した竹林の整備につながり、筍が生え、景観もよくなっていると報告を受けており、伐採した竹を資源活用するという持続可能な取り組みは、動物の餌資源としてのみならず、良好な里山整備にもつながっています。このように、それぞれの課題を共有し、連携して取り組んだ今回の事例は、動物の福祉向上と地域課題の解決という相乗効果をもたらしており、当園の社会貢献としても評価できるものと思っています。 当園はレッサーパンダ飼育を開始して 1 年 9 か月。経験、知識も浅く今後の課題もありますが、動物たちの魅力を発信しつつ、地元団体との連携を大切にしていきたいと思います。
熊本市動植物園 レッサーパンダ班
大川菜穂美 診療教育班 溝端菜穂子
この度は、熊本市動植物園との取組に対してこのような素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。
レッサーパンダの笹を搬入するようになったのは、令和4年度の4月頃からでした。動植物園より“笹を安定的に供給できるようにしたい”との相談があり、協力させていただくことになりました。当会は、林野庁の事業である「森林・山村多面的機能発揮対策交付金事業」の事務局を担っております。本事業は、荒廃した里山林の整備を行う団体に対して一定の金額を支援するもので、熊本県では現在85団体が活動を行っています。そのうち約70団体が竹林整備を行っていますが、多くが?伐採後の竹の処理″に頭を悩ませています。竹炭にしたいけど燃やす場所がない、竹細工やメンマなどに加工したいけど技術がない…など、竹資源の活用は容易ではなく、結局は山の中に置いたままになることが多いのです。レッサーパンダの笹搬入の取組は、この問題を解決するうえでの糸口になったと感じています。竹の利活用方法の一つとして今後より多くの方に知ってもらい、放置竹林問題の解決に少しでも貢献できれば嬉しいです。
また、現在搬入をお願いしている4団体においては、新鮮な笹確保のため搬入当日の伐採にご協力いただいております。早朝からの作業は大変だと思いますが、「次回の搬入はいつですか?」とレッサーパンダに会うのを楽しみにされている活動団体もあり、整備へのモチベーションアップに繋がっているのではないかと感じています。今後も活動団体と一緒にレッサーパンダの食を支え、成長を見守っていけたらと思っています。
熊本県森林組合連合会
矢野呼春
「共に生き、働き、憩い、出会う、楽しみが持てる人生に」が当法人の理念です。私たちはこの理念のもと、地域共生社会の実現と障がいを持つ利用者様お一人お一人の「個人の尊厳」を尊重し、より豊かな人生を楽しむことが出来るよう最大限努めています。
その理念(地域共生社会実現、利用者幸福追求)に基づき、森林・山村多面的機能発揮対策事業に取り組むことになり、以下の活動を行っています。
1.当法人が位置する地域の竹林整備において、竹林整備担い手の高齢化や機材不足のために難航していました。地域老人会より要請を受け、老人会所属の地元住民と当法人職員・施設利用者さんなどで構成される組織で竹林整備にあたっています。
2.竹林整備後は、整備された竹林より産出される良質な竹材料を使って、高品質の竹製品(竹ほうき・熊手・竹箸・竹スプーン・竹チップ・笹の葉・バンブーハンガー)を製作しています。
3.竹林整備は、当法人利用者さんの仕事の場となり、利用者さんが竹林整備に従事した際の人件費に交付金を利用することで、利用者さんの喜びに繋がっています。
この竹林整備事業の結果、竹林に上質な竹が育つようになりました。その竹林で取れた栄養価の高い笹を主食とするレッサーパンダさんがすくすくと育ち、このたび赤ちゃんが誕生したことは、当法人にとってもこの上ない喜びであります。
交付金を利用した竹林整備の結果として地元住民に喜びをもたらし、良い竹林の竹笹を食べたレッサーパンダさんに可愛い赤ちゃんが生まれて動物園に来る人に喜びをもたらしている。竹林整備とそれを活用したレッサーパンダの笹搬入は、喜びの循環を創出する取組であると感動しています。