京都市動物園京都府
アジアゾウに対するエンリッチメントの取り組み

エンリッチメントの目標がピンポイントかつ明確に設定されており、実施した内容を評価し、その結果を次の取り組みへとつなげていく「SPIDERモデル」をまさに体現した、模範的といえる取り組みです。また、この取り組みの優れた部分として、市民の参画にも積極的に努めており、さらにそれが機能的に働いている点にも注目しました。市民への普及啓発についても重要視するエンリッチメント大賞において、4年ぶりの大賞にふさわしい取り組みであると評価します。
野生のアジアゾウが高い位置の枝葉を採食する際に見せる、鼻を高く上げる動きを飼育環境でも引き出すことを目指すとともに、常同行動が多く見られる個体については、その減少も目標としました。複数種類のフィーダーを日替わりで使用するなどの工夫をおこない、その効果を監視カメラによる行動観察で定量的に評価しました。その結果、対象となった4頭すべてで鼻を高く上げて探索する行動の増加が確認され、さらに、常同行動が多かった個体では、その減少も確認されました。このように、明確な目標を設定し、取り組みを実施するだけでなく、その効果を客観的に評価し、次の取り組みにつなげていく一連のプロセスが実践されている点が高く評価されました。
利用されているフィーダーの一部は市民向けのエンリッチメントイベントを開催し、寄せられたアイディアが実際に使われています。参加者の理解を深めることができ、それが斬新なアイディアにつながっているのです。また、イベント「ゾウの森を再現しよう」でも市民の力を借りて、放飼場内に一斉に植栽や剪定枝を設置し、ゾウの“森を破壊する動物”としての行動を引き出すことができました。動物園職員のマンパワーだけでは実施が難しい試みを、大勢の市民を巻き込むことで実現できた好例といえるでしょう。動物福祉の向上を目指した取り組みと、その成果や考え方を広く普及していく取り組みがうまく一体化している点で特徴的です。
こうした「SPIDERモデル」に基づく丁寧な取り組みと、普及啓発とを適切に組み合わせる努力が全国の動物園・水族館にも広がっていくことを期待します。


